2008年 05月 09日

イタリア式骨肉の争い

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                  お金は、中立というけれど、
             人々がその上にのせる感情から生まれる騒動は、
                    イタリアも日本も同じ?
                  

          
フランチェスコの訪問


「フランチェスコは、この家を買おうと思ったんだ。
でも、親戚が欲張りで、結局断念したんだよ」

カターニアの郊外を車で通ったとき、
友達が古い一軒の家を指差して言う。

フランチェスコは、彼の古くからの親友の一人。
のんびりやでマイペース、料理上手な平和主義。

「フランチェスコのおばあさんが亡くなったとき、
この古い家も、財産のひとつとして残したんだ。

孫のフランチェスコが、買いたいっていったら、
子供たち、つまりフランチェスコのおじさんやおばさんがたちが、欲張りなやつらでさ、
相場より高い、法外な値段をフランチェスコにふっかけてきたんだよ。
だから、結局、あきらめたんだ。」


そんな話をきいた翌日、昼間一人で家にいると、
そのフランチェスコが、突然ひょっこり尋ねてきた。

「カターニアに用があって、近所に寄ったから。」
細くて、小柄な体に、バイクのヘルメットを抱え、相変わらず平和そうな笑顔。

ひとしきり、外のベンチで、近況やら、料理の話をして、少しすると、

「今から、お母さんのところに行かなくっちゃ。彼女、最近疲れているんだ。」
「なんで?」 反射的にきくと、
「うーん・・・・」 
なんていったらいいのかな?どこから説明したらいいものか、
そんなふうに、空をみあげる。

「いろんなことで?」 別に説明しなくってもいいよサインを送ると、
「うん、そう、いろんなことで。 話せば長い話なんだよ。」

「また会おう」 そういって、ひげの中でにこっと笑って手をふる。

夕方、フランチェスコのお家事情を教えてくれた友人に、
「フランチェスコが昼間きたけど、お母さんが、疲れているっていってたよ」 報告すると、
「フランチェスコの家は、また大変なんだよ。」
新たなお家事情を教えてくれる。


”貧乏な(はずだった)おじさんの死”

「今度は、フランチェスコのお母さんの弟、つまりフランチェスコのおじさんが、亡くなったんだ。
彼の名は、サルバトーレ、でも、シチリアの方言で、”トウーリ・ウ・ビーリ” って言われてた。
サルバトーレ・ピーグロ、つまり、怠け者のサルバトーレって意味さ。

一人もので、働いていたのかも、よくわからず、
いっつも汚いかっこして、長いひげ生やしてた。
車は、古いフィアットの赤のセイチェント。
そこに、犬やら、ニワトリやら、何でものせるから、中は、くさいのなんのって。

ぼろぼろの壊れた家に住んでいて、
貧乏で、変人だったから、みんなに嫌われていた。

そのおじさんが、死んだんだ。

しばらくして、ある日、公証人が、突然兄弟、姉妹のところにやってきた。
”あなたの弟さんの遺産は、これだけですって”」

あけてみて、びっくり。貧乏なおじさんは、貧乏じゃなかった。
貧乏じゃなかったどころか、大金持ちだった!

フランチェスコのおじさんおばさんたちの間に、
おばあさんが、亡くなった時以上の騒動が沸き起こった。

誰が家をとるか、銀行のお金は、どう分けるか?

「フランチェスコのお母さんは、欲のない人だから、フランチェスコがついてあげてないと
おじさんとおばさんたちで、勝手にどんどんわけちゃうんだよ。
さらに、そのだんなや、おくさん、つまり、義理のおじさんやおばさんまで加わって、
話し合いのときには、殴り合いまでおこるんだ。」

まさに、"骨肉の争い”・・・・

骨肉とは、日本語で、血族のことをいうらしいけれど、
イタリア語にこの言葉にぴったりの訳がないのが、ふしぎなくらい。
イタリア人同士の争いこそ、まさに、「骨肉」という生々しいことばが、
ぴったりのような気がするのに。

「おじさん、壊れた家になんか住まないで、生きているうちに、
家でもきれいにして住めばよかったのにね」 ひとごとながら、そういうと、
「そういうことにお金使わなかったから、残ってたんじゃないのか?」

うむ・・・たしかに。

前に亡くなったおばあさんと、この"生きているうちは、貧乏だった”おじさんが、
「おいおい、下で、またやってるよ」
天国で、カフェでもすすりながら、高みの見物をしている姿を想像する。

唯一、日本人の私をほっとさせたのは、
おじさんが死んだあとのぼろぼろの家、
なぜか、お風呂だけは、最新式のジェットバスだったということ。

わかるよ、おじさん。
お風呂くらい、ゆっくりつかりたいもんね。

生きているうちは、貧乏だったおじさん。
生きているうちに、最新式のジェットバスにゆっくりつかっておいて、ほんとによかったね。
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by andosachi | 2008-05-09 15:47 | シチリアの生活


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