イタリア料理スローフード生活

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2008年 05月 28日

緑の中を歩くーネルソン提督の家

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草むらから初夏の匂いのするある晴れた日、
Maniace (マニアーチェ)の、ネルソン提督の家に行きました。

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by andosachi | 2008-05-28 00:46 | シチリアの小さな旅
2008年 05月 20日

さよなら、ドン・ミケーレ

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                にんにくが収穫される初夏。
       きれいに編まれたたくさんのにんにくが、市場に並びます。
         
     真ん中、目をつぶっているのが、若きころの八百屋のドン・ミケーレ
    「おーい、農家から、にんにく買ってきたから、みんな編むの手伝ってくれよ!」

ドン・ミケーレ、81歳

「ドン・ミケーレが死んだよ」

日本にいたころ、シチリアの友達が、電話の最後にぼそりと付けくわえた。

すぐに、
シチリアの老人がよくかぶっている、コッポラといわれるハンチング帽をかぶり、
ジャケットをきちんときて、こじんまりと野菜が並ぶ小さな店先に椅子をだして、
その中に、すっぽり入り込むように腰をおろし、世間をながめていた、
小柄な老人の姿が浮かんだ。

それが、八百屋のドン・ミケーレ。

シチリアにきてすぐ、その八百屋にいったとき、
「だんなさんがいけませんでしたね。」
残念です、そんな気持ちを伝えたくて、店にいた奥さんに言った。

白髪に黒い服。
小柄なドン・ミケーレよりさらに小柄な体。
奥さんの目に、おどろくほどの喪失感があった。

「古いものが逝かなけりゃ、新しいものが生まれてこないからね」

表情を変えずに、ちょっと人事みたいにいう。



「長年連れそった相手が、いなくなったんだもの。当たり前だよ」

家に帰って奥さんの様子を友達に伝えると、そんなふうにいう。
60年、それ以上?毎日一緒にくらした人が
ある日から、突然いなくなるって、どんな気持ちなんだろう?


ずいぶんたってから、また野菜を買いにいったとき、
店のはしっこに、ひっそりと飾られた、この古い写真に気がついて、

「もしかして、だんなさんの若いころですか?」 聞くと
「そうよ」 と奥さん。

「古いイタリア映画みたい」 じーっと見つめて私がいうと

「映画じゃないわよ、本物よ。
正真正銘のシチリア人たちよ。」

誇らしげに、きっぱりいって、にっこり笑う。

目の奥にあったグレーの喪失感が、だいぶ薄らいでいるように感じる。

ふと思った。

こうやって、人は、喪失を、受け止めていくんだ。
魔法や近道があるわけじゃない。

時間と受容。


「もう、ずいぶん、みんないなくなっちゃったけどね」
写真を見つめながら、奥さんがいう。

ドン・ミケーレもその一人。

古いものが逝かなければ、新しいものが生まれてこない。

そんな言葉に、必然を感じながらも、
心のどこかで、

この写真のように、
太陽が夏を思わせるこの季節、

街角で、友達総出で、笑って、しゃべって、おどけながら、にんにくを編む、
ドン・ミケーレの、そんな古き時代の喪失を受け入れることに、
残念な気持ちがつきまとう。

行商から商売をはじめたドン・ミケーレが逝って、

外国資本の郊外型巨大スーパーが、
雨後のたけのこのごとく進出しているカターニア。

もう、みんなを大声で呼んで
路上でにんにくを編むことも、

「古い写真」の中だけの話に・・・。
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by andosachi | 2008-05-20 05:51 | シチリアの生活
2008年 05月 15日

シチリアに、ジロディイタリアがやってきた

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          イタリアを横断する自転車レース、ジロディイタリア
              5年ぶりにシチリアにもやってきました。

第3タッパ(区間)は、カターニアから

弟が大の自転車好きで、
家でもよく一緒にレースのビデオを見ていました。

このジロディイタリア、
イタリア横断といっても、毎年、シチリアに来るわけではなく、
むしろ、予算やコースの都合から、シチリアにくるのは、めずらしいとのこと。

イタリアでこのレースを見たがっていた
弟のかわりに見に行くぞ、と家を出発。

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by andosachi | 2008-05-15 02:09 | シチリアの生活
2008年 05月 09日

イタリア式骨肉の争い

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                  お金は、中立というけれど、
             人々がその上にのせる感情から生まれる騒動は、
                    イタリアも日本も同じ?
                  

          
フランチェスコの訪問


「フランチェスコは、この家を買おうと思ったんだ。
でも、親戚が欲張りで、結局断念したんだよ」

カターニアの郊外を車で通ったとき、
友達が古い一軒の家を指差して言う。

フランチェスコは、彼の古くからの親友の一人。
のんびりやでマイペース、料理上手な平和主義。

「フランチェスコのおばあさんが亡くなったとき、
この古い家も、財産のひとつとして残したんだ。

孫のフランチェスコが、買いたいっていったら、
子供たち、つまりフランチェスコのおじさんやおばさんがたちが、欲張りなやつらでさ、
相場より高い、法外な値段をフランチェスコにふっかけてきたんだよ。
だから、結局、あきらめたんだ。」


そんな話をきいた翌日、昼間一人で家にいると、
そのフランチェスコが、突然ひょっこり尋ねてきた。

「カターニアに用があって、近所に寄ったから。」
細くて、小柄な体に、バイクのヘルメットを抱え、相変わらず平和そうな笑顔。

ひとしきり、外のベンチで、近況やら、料理の話をして、少しすると、

「今から、お母さんのところに行かなくっちゃ。彼女、最近疲れているんだ。」
「なんで?」 反射的にきくと、
「うーん・・・・」 
なんていったらいいのかな?どこから説明したらいいものか、
そんなふうに、空をみあげる。

「いろんなことで?」 別に説明しなくってもいいよサインを送ると、
「うん、そう、いろんなことで。 話せば長い話なんだよ。」

「また会おう」 そういって、ひげの中でにこっと笑って手をふる。

夕方、フランチェスコのお家事情を教えてくれた友人に、
「フランチェスコが昼間きたけど、お母さんが、疲れているっていってたよ」 報告すると、
「フランチェスコの家は、また大変なんだよ。」
新たなお家事情を教えてくれる。


”貧乏な(はずだった)おじさんの死”

「今度は、フランチェスコのお母さんの弟、つまりフランチェスコのおじさんが、亡くなったんだ。
彼の名は、サルバトーレ、でも、シチリアの方言で、”トウーリ・ウ・ビーリ” って言われてた。
サルバトーレ・ピーグロ、つまり、怠け者のサルバトーレって意味さ。

一人もので、働いていたのかも、よくわからず、
いっつも汚いかっこして、長いひげ生やしてた。
車は、古いフィアットの赤のセイチェント。
そこに、犬やら、ニワトリやら、何でものせるから、中は、くさいのなんのって。

ぼろぼろの壊れた家に住んでいて、
貧乏で、変人だったから、みんなに嫌われていた。

そのおじさんが、死んだんだ。

しばらくして、ある日、公証人が、突然兄弟、姉妹のところにやってきた。
”あなたの弟さんの遺産は、これだけですって”」

あけてみて、びっくり。貧乏なおじさんは、貧乏じゃなかった。
貧乏じゃなかったどころか、大金持ちだった!

フランチェスコのおじさんおばさんたちの間に、
おばあさんが、亡くなった時以上の騒動が沸き起こった。

誰が家をとるか、銀行のお金は、どう分けるか?

「フランチェスコのお母さんは、欲のない人だから、フランチェスコがついてあげてないと
おじさんとおばさんたちで、勝手にどんどんわけちゃうんだよ。
さらに、そのだんなや、おくさん、つまり、義理のおじさんやおばさんまで加わって、
話し合いのときには、殴り合いまでおこるんだ。」

まさに、"骨肉の争い”・・・・

骨肉とは、日本語で、血族のことをいうらしいけれど、
イタリア語にこの言葉にぴったりの訳がないのが、ふしぎなくらい。
イタリア人同士の争いこそ、まさに、「骨肉」という生々しいことばが、
ぴったりのような気がするのに。

「おじさん、壊れた家になんか住まないで、生きているうちに、
家でもきれいにして住めばよかったのにね」 ひとごとながら、そういうと、
「そういうことにお金使わなかったから、残ってたんじゃないのか?」

うむ・・・たしかに。

前に亡くなったおばあさんと、この"生きているうちは、貧乏だった”おじさんが、
「おいおい、下で、またやってるよ」
天国で、カフェでもすすりながら、高みの見物をしている姿を想像する。

唯一、日本人の私をほっとさせたのは、
おじさんが死んだあとのぼろぼろの家、
なぜか、お風呂だけは、最新式のジェットバスだったということ。

わかるよ、おじさん。
お風呂くらい、ゆっくりつかりたいもんね。

生きているうちは、貧乏だったおじさん。
生きているうちに、最新式のジェットバスにゆっくりつかっておいて、ほんとによかったね。
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by andosachi | 2008-05-09 15:47 | シチリアの生活